こんな悩みはありませんか?実は、それ “ 甲状腺ホルモン ”の病気かも
甲状腺ホルモンにかかわる病気と、更年期障害は混同しやすく、わかりづらいので放っておかれがち。40~50代の女性で、なんとなく体調が悪い…動悸がする…むくみが…気力低下が…と思ったら、ぜひ血液検査をおすすめします!
1.甲状腺ホルモンとは
甲状腺ホルモンを分泌するのが甲状腺。ノドボトケの下にあり、蝶々のような形をしています。甲状腺は脳の下垂体から指令を受けて、全身の代謝を調節する役割を担っており、新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌するのが主な働きです。
甲状腺ホルモンのはたらき
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甲状腺ホルモンが低下すると、体温が実際に下がり、冷えを自覚します。更年期の女性には「冷え」が多くみられます。手足や足先、腰から下がとても冷たく感じられる症状です。
2.甲状腺は多くても少なくてもNG!
甲状腺ホルモンは分泌量がとても重要。多すぎれば必要以上に代謝が活発になって動機や多汗などの症状が起き、少なすぎれば逆に寒がり、倦怠感や眠気などの症状がでてきます。 甲状腺が腫れたり、しこりができるといった見た目や間食の異常があればわかりやすいのですが、形は正常のこともあるので注意が必要。
甲状腺ホルモンの分泌量を調整しているのは、脳(視床下部)から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)で、甲状腺を刺激してホルモンの分泌を促進します。
<共通の症状>
- だるい
- 疲れやすい
- 髪の毛が抜ける
- 甲状腺が腫れることもある
甲状腺ホルモンが多すぎる場合
暑がり
多汗
脈拍数が多い
不整脈
動悸がする
体重が減る
食欲旺盛
手足が震える
イライラする
排便の回数が増える
眼球が出る
息切れしやすい
かゆみがある
口が乾きやすい
早口になる
生理の間隔が短い
生理の出血量が少ない
コレステロール値が低い
↓
甲状腺中毒症 <バセドウ病>
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甲状腺ホルモンが少なすぎる場合
寒がり・低体温
うつっぽい
脈拍数が少ない
貧血
むくみやすい
体重が増える
気力がわかない
もの忘れしやすい
筋力が低下
便秘がち
動作が鈍い
眠気を感じやすい
皮膚がカサカサ
声が枯れる
足がつりやすい
生理の間隔が長い
生理の出血量が多い
コレステロール値が高い
↓
甲状腺機能低下症 <橋本病>
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「甲状腺中毒症」は、血中の甲状腺ホルモン値が異常に高くなった状態の総称です。代謝が活発になり暑がりや多汗の症状が出ます。
原因は、甲状腺でホルモンが多く作られすぎること(この状態が「甲状腺機能亢進症」)と、甲状腺が壊れたりして血液に漏れ出たために血中の甲状腺ホルモンが多くなりすぎること(機能亢進症は伴わない「破壊性甲状腺炎」)、甲状腺ホルモンの過剰服用などがあります。
甲状腺機能亢進症の代表はバセドウ病、自律性機能性甲状腺結節、妊娠性一過性甲状腺機能亢進症など。「破壊性甲状腺炎」には、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎などがあります。
また、甲状腺ホルモン値は正常なのに、TSH(甲状腺刺激ホルモン)値が高い「潜在性甲状腺機能低下症」は、軽度の甲状腺機能低下症で、近年はいろいろな研究・検証の結果が発表され、放置すると動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高くなることもわかってきたため、治療する方向に向かっています。
また、女性の場合で、ホルモンの数値は低くないのにTSHが基準値内にある中枢性の甲状腺機能障害の方も少なくありません。うつ、月経不順、冷え、倦怠感などがある場合は、治療によって改善することがあります。
3.甲状腺ホルモンの材料は『ヨウ素』
甲状腺は海藻などに含まれる栄養素、ヨウ素(ヨードともいう)を取り込み、これを材料に甲状腺ホルモンを作ります。したがって、海藻をよく食べる日本人は、材料が不足することはあまりありません。
逆に、過剰に摂取すると甲状腺ホルモンの分泌が減り、一時的な甲状腺機能低下症になることも。成人女性の1日の推奨量は130µg(0.13mg)。ヨウ素を多く含む食材は下記の目安量を参考に確認してくださいね。
食材・料理 |
1食の目安量/含まれるヨウ素量 |
昆布煮 |
5g(乾燥昆布)/12000µg |
昆布だし汁 |
1g/3000µg |
ひじきの煮物 |
7g/2000µg |
昆布の佃煮 |
15g/1650µg |
ヨード卵 |
1個正味50g/650µg |
タラ(マダラ) |
大1切れ100g/350µg |
ところてん |
100g/240µg |
わかめの味噌汁 |
10g(乾燥わかめ)/190µg |
あわび |
中1個100g/180µg |
海苔 |
2分の1枚1g/60µg |
甲状腺ホルモンは2種類
甲状腺ホルモンにはヨウ素が3つ結合したT3と、4つ結合したT4の2種類があり、4分の3をしめるT4は、T3の前駆体のようなもの。必要に応じて作用の強いT3に変化して使われます。
最終的にはたらけるのは、タンパク質と結合していない遊離型の甲状腺ホルモンで、これらをFT3(フリーT3)、FT4(フリーT4)と呼びます。 血液検査で調べるFT3の量で、甲状腺ホルモンの作用の程度が、FT4でホルモンを作る能力がわかります。
4.糖質制限ダイエットには注意!「低T3症候群」
低T3症候群(low T3 syndrome)は、TSHとFT4の数値は正常なのに、FT3だけが低いという不思議な状態。甲状腺機能低下症と似たような症状がでます。 ただ、これは、甲状腺の病気ではなく、反応レベル。
エネルギー不足で飢餓状態を感じたとき、体全体のエネルギー代謝を落として回復させようとする自然の反応なのです。 拒食症の人が診断されることが多いのですが、最近では、糖質制限ダイエットをしている女性に増えているようです。
糖質を減らした分、脂質とタンパク質でエネルギーをとらなければならないところをとれていない、ということ。 食事を改善するだけでFT3の数値も正常になりますが、長期間そのままにしておくと治らないこともあります。 本人が気がついていないだけで、実は間違った糖質制限による低T3症候群はますます増えているかもしれません。