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ICU患者の腸内細菌叢も劇的変化☆シンバイオティクスは〇〇患者にも有効

今回は、いつもよりお堅めのテキストになります。 専門用語は少し説明を加えておりますが、私が、美腸活セミナーでいつも申し上げている内容を、腸内微生物学会で正式発表していただいたので感動です! やっぱり「シンバイオティクス」でしょ!!



1.ICU患者の腸内細菌叢が、劇的に変化します!


今、医学領域で最も熱いテーマは、「腸や口腔の常在細菌叢と疾患との関わり」


以前から知られている腸疾患や歯周病ばかりでなく、がんや認知症、動脈硬化や骨粗鬆症、自己免疫疾患やアレルギーとの関連性が続々と指摘され、プレバイオティクスやプロバイオティクスで予防/治療したという事例の報告も激増しているとのこと…


これは一時的ブームなのか? もしくは、医学のパラダイムシフトなのか?


科学的に見定める必要があることから、第34回日本静脈経腸栄養学会(2月14~15日)では、日本臨床腸内微生物学会との合同シンポジウムが開催されました。


大阪大学病院高度救命救急センターの清水健太郎氏は、ICU患者の腸内細菌叢について興味深い内容を発表されました。


便グラム染色のパターンで予後が分かる!


清水氏らはICUで日常的に便のグラム染色を行っています。 下痢便もグラム染色を行えば、細菌叢のタイプが速やかに判断できるという。


提示された症例は、第1病日には紫に染まる陽性桿菌と赤の陰性桿菌が多数見られたが、抗菌薬投与後の第6病日には菌がまばらになり、陽性球菌が目立ちだし… 第9病日になると陽性球菌が支配的となり、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)による菌交代と確認されまし。


ICUでの重症患者の便グラム染色の所見をパターン化すると、(図1)のようになります。


  • グラム陽性菌と陰性菌が保たれた健常パターンの死亡率 6%
  • 菌数が減少またはカビが出現する単純化パターン 52%
  • 全ての菌が消えた消失パターンでは 64%


臨床現場で容易に行える便グラム染色からは、腸内細菌叢の変化や患者の状態など、想像以上に豊富な情報が入手できるとのこと。



図1.便グラム染色による腸内細菌叢のパターンと死亡率の関係

(Dig Dis Sci 2011; 56: 1782)


16S rRNA解析で腸内細菌叢の大きな個人差が判明


腸内細菌叢の定量的把握は可能なのでしょうか?


清水氏らは共同研究で、16SリボソームRNA(16S rRNA)を用いた網羅的解析を実施。

16S rRNAは腸内細菌を生物分類の 「界・門・綱・目・科・属・種」 に至るまで解析できるが、ここでは下記の腸内細菌叢の主要5門に分類して比率を比較。




1.  Bacteroidetes(バクテロイデス門など:日和見菌といわれる中での通称ヤセ菌)


2. Firmicutes(フィルミクテス門クロストリジウム属、腸球菌、ブドウ球菌、乳酸桿菌など:日和見菌といわれる中での通称デブ菌)


3. Proteobacteria(プロテオバクテリア門:大腸菌、緑膿菌など:悪玉菌といわれる)


4. Actinobacteria(アクチノバクテリア門:ビフィズス菌など:善玉菌といわれる)


5. Fusobacteria(フソバクテリア属など)





まず、重症患者12例の入院後第一便を調べたところ、図2のようになった。

① Bacteroidetesの比率は80%弱から約20%未満まで幅広く分布

② FirmicutesやProteobacteriaの比率もまちまちで


門レベルですら腸内細菌叢の個人差は非常に大きかった


71例の検討でも同様の結果だったという。これまでICUで腸内細菌叢と予後の関係が検討され明確な結果が出なかったのは、細菌叢の個人差のためではないか。注目すべきは、むしろ個々の患者での継時的変化であろうと同氏は考えた。



図2.重症患者12例の門レベルでの腸内細菌叢構成比


(Dig Dis Sci 2016; 61: 1628-1634)


そこで、12例の腸内細菌叢の変化を継時的に検討した。

入院1日目にFirmicutesが7割以上を占めたある例は、6日目にActinobacteriaが優勢となり、8日目はBacteroidetesが主体となった。…この時期は抗菌薬の影響が大きく、重症患者の腸内細菌叢は日々大きく変化している。


この点でBacteroidetesとFirmicutesの比(B/F比)は1つの指標になるかもしれない。B/F比は健常人ではほとんど不動だが、重症患者では変動が大きい。そして、この値が10以上または0.1以下となると全例が死亡した。


このB/F比の変化と予後の関わりについては、今後も検討を続ける予定だという。



2.シンバイオティクスは、『 セプシス患者 』の合併症を減らします!!


腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は、大腸上皮細胞のエネルギー源として重要であり、 近年は酪酸の抗炎症作用酢酸の腸管tight junction保持作用などで注目されています。


そこで清水氏らは、全身性炎症反応症候群(SIRS)患者140例の便中短鎖脂肪酸を分析。 すると、SIRS患者では酢酸が健常人の3分の1、酪酸は検出感度以下まで激減


減少は6週間回復せず、SIRSのような大きな侵襲を受けると、短鎖脂肪酸をつくり出す細菌叢もなかなか回復しないことが示されました。同時に便pHを調べたところ、正常値の6.6より高い例が多く、そうした例で予後が悪いことが分かりました。


では、腸内細菌叢の改善は疾患予防につながるのでしょうか?


有用とされる細菌とそのエサを同時投与する「シンバイオティクス療法」は、大手術の術前に行われ術後合併症を減らすことが報告されています。


ICUに予防の考え方はなじまないものの、清水氏らは人工呼吸器を要する入院3日以内のセプシス患者を対象に、シンバイオティクス療法を試みました。(Crit Care 2018; 22: 239)。

結果は… 1週間後の便中総菌数はシンバイオティクスで著しく増加! 投与した菌株だけでなく腸内細菌叢全体が増えていました!

Tight junction保持作用などから、全身への炎症波及の抑制が期待される酢酸も急増!

下痢の発生率は6%(非投与群27%)、人工呼吸器関連肺炎は14%(同46%)と感染性合併症は明らかに減少!!


この結果を受けて、清水氏のまとめ


シンバイオティクスによる腸内細菌叢と腸内環境の改善は、セプシスのような重篤な疾患でも合併症を減らし、予後を向上させる可能性がある


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田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

美腸カウンセラー®/美腸をつくるたった2つの習慣で、免疫力up・美肌get・ヤセ菌増やして痩せやすい体を手に入れるoriginal『美腸Methods®』を全国に展開。 【藤田絋一郎先生(東京医科歯科大学名誉教授)監修】
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