腎臓はオシッコを作るだけじゃないの!生活習慣病と深く関係している腎臓
近年、腎臓の病気「慢性腎臓病(CKD)」が急増中で、患者数は1330万人と推計されています。この慢性に進行する腎臓の病気は、サイレント・ディジーズ(静かなる病気)といわれ、初期にはほとんど症状が出ないため、健診で異常を指摘されても軽く考えてしまい、放置する人が多く、かなり進行しないと症状があらわれません。 オシッコを作るだけじゃない、腎臓の大事なはたらきをまとめてみました。
1.腎臓のすばらしい4つのはたらき
腎臓について
腎臓は腰の少し上の背中寄りにある、左右一対のそら豆のような形をした臓器。 握りこぶしほどの大きさですが、心臓から送り出される血液の約40%がつねに送られています。腎臓はこの大量の血液から体に必要なものを選別し、不要なものは尿として排出しています。
血液をろ過して、老廃物などを体外に排泄しているのは腎臓の中の「ネフロン」という組織。毛細血管のかたまりである「糸球体」と「尿細管」から成り、ひとつの腎臓に約100万個もつまっています。(左右の腎臓で、トータル約200万個!)
ネフロンはいつもフル稼働しているわけではなく、かなり余力を蓄えた状態ではたらいています。なので、病気や生体腎移植で片方の臓器を失った場合でも、それまで休んでいた残りのネフロンがはたらき、腎機能を保つことができます。
腎臓の毛細血管は糸球体の中にありますが、この糸球体のはたらきによって血液から老廃物が取り除かれ、きれいな血液を全身に送り出すことができるのです。
30~40代になると腎臓も徐々に老化していきますが、予備能力が高いため、腎機能の低下は無症状のまま水面下で進行します。 ただ、劣化すると、糸球体の濾過フィルターの目が粗くなったり、詰まったりして、体に必要なものまで漏れ出たり、尿細管の再吸収が上手に行われなくなってきます。
つまり、血液中に老廃物がたまったままになるということです。
腎臓は、尿を作るほか、血圧や水分・電解質のコントロール、骨の形成など生命を維持するためのさまざまな仕事を担っています。腎機能が衰えると、やがて命の危険につながることもあるという自覚が必要になります。
4つのはたらき
①血液をろ過して老廃物を尿として出す
全身をめぐる血液は腎動脈から腎臓に送られ、「糸球体」でふるいにかけられ、体に必要な水分や成分を含んだきれいな血液が腎静脈を経て心臓へ戻ります。糸球体でろ過され、取り除かれた老廃物や水分は尿のもと「原尿」となり、1日に約180㍑も作られます。ただし、原尿には体に必要な成分が多く残っているため、その約99%は「尿細管」で再吸収され、残りの1%にあたる1.5㍑ほどが、膀胱へ送られ、尿として排泄されます。
②血圧をコントロール
水分や電解質(NaやK)の排出量をコントロールすることで血圧を調整します。血圧が高いときは塩分と水分の排出量を増やして血圧を下げ、血圧が低いときは逆に排出量を減らして血圧を上げます。
また糸球体から分泌されるホルモンには、血管を収縮させ、血圧を上昇させるはたらきがあります。腎臓の髄質から分泌されるホルモンには、血管を拡張させ、血圧を下げるはたらきがあります。
③血液をつくる
血液を作る司令塔でもあり、腎臓から出るホルモンは、骨髄に作用して赤血球の生成を促しています。
④丈夫な骨をつくる
カルシウムを体内に吸収させるのに必要なビタミンDを活性化させるはたらきもあります。尿中のカルシウムの吸収を促し、血液中のカルシウム濃度を維持します。
2.腎臓の病気
●血液検査で「血清クレアチニン値」が高いと、腎機能が低下していると判断されますが、クレアチニンは血液中の老廃物の指標です。
●腎機能が低下して、糸球体から漏れないはずの血液中のタンパクが濾過されて尿に漏れ出ている状態を、「タンパク尿」といいます。 急性の場合は、背中に痛みが出ますが、慢性腎臓病は自覚症状がなく、血液検査や尿検査ではじめて異常が発見されることが多いです。
●よく、歳をとると夜中に何回もトイレに行くようになるのは、腎臓が悪いのではなく、加齢による抗利尿ホルモンの分泌の低下が原因です。抗利尿ホルモンは、尿細管に作用して水分の再吸収を促す働きがあり、不足すると薄い尿がどんどん作られて、夜中でもトイレに行きたくなります。
3.慢性腎臓病と生活習慣病の関係
●腎臓は、血圧の調節にかかわるホルモンを分泌しているため、腎臓のはたらきが落ちると高血圧になったり、逆に高血圧が腎臓病を招くこともあります。 また、高血糖によって代謝異常が起きて、腎臓の毛細血管がダメージを受けると、糖尿病の人は糖尿病腎症を合併しやすくなります。 ちなみに、現在、人工透析になる人の最も多い原因は、糖尿病です。
●腎臓は、毛細血管の集合体ですから、冷えて血流が悪くなると腎臓の毛細血管のはたらきが低下します。 冷えやすい人は、腹巻などで腰回りを冷やさないようにしたり、夜はゆっくり湯船につかるようにしましょう。 ただ、温度が熱すぎると交感神経が優位になって睡眠の妨げになるので、少しぬるめにして。 ただし、腎機能障害や、血圧障害、高血糖がある人は、浴室の中と外との寒暖差に気をつけてください。
●尿酸は細胞の新陳代謝などにより生じる老廃物です。 通常は尿とともに排出されますが、腎機能が低下すると、尿酸がうまく排出できず、尿酸値が高くなり痛風や通風腎、尿路結石を招きます。 女性ホルモンには、尿酸の排出を促すはたらきがあるため、確かに、尿酸値が高いというのは男性に多い傾向はあるのですが、女性ホルモンが急減する更年期世代では、尿酸値が高くなる人が増えてくるので油断は禁物。
尿酸値を抑えるには、「プリン体」の摂取を控えること。プリン体は、細胞の核を構成する非常に重要な物質なのですが、新陳代謝の際に肝臓で分解されるとき、尿酸を排出するのです。プリン体の多い食品は、レバー、あん肝、白子、ビールなど。尿酸の排せつを促すために、水分もしっかりととりましょう。
●オシッコチェックリスト●
“ 健康な人のオシッコ ”
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1.色
黄色が濃い |
運動などでたくさん汗をかいた、朝起きぬけ、ビタミン剤などで強い黄色になることも。濃い褐色で、泡にまで色がついているときは肝臓や胆道の病気の可能性も。 |
赤っぽい・茶色っぽい |
尿に赤血球が混じっている血尿の疑いが。膀胱炎、尿路結石、慢性・急性腎盂腎炎などの可能性も。便秘薬や抗生物質、糖尿病の薬の中には尿を赤くするものも。 |
白濁している |
ほうれん草、たけのこ、チョコレートなどシュウ酸を多く含む食品をたくさんとると、尿が濁る場合が。感染症により、細菌や細菌と闘った白血球の残骸で濁っている可能性も。膀胱炎や尿同園、腎盂腎炎の疑いも。 |
2.におい
ツンとする |
膀胱炎や腎盂腎炎などで細菌が繁殖すると、ツンとする刺激臭がすることが。尿路感染症の疑い大。 |
甘酸っぱいにおい |
体内で糖の代謝異常があると、肝臓で脂質が多く利用されるため、ケトン体という代謝物が尿中に出る。糖尿病の可能性あり。 |
3.状態
ブクブクと泡だっている・流した後も泡が消えない |
タンパク尿の可能性大。腎臓病の疑いが。ただし、運動や立ち仕事のあとなどにタンパク尿が出ることもある。 |
沈殿物がある |
腎臓結石、尿路結石があると、結石のかけらが混じることが。膀胱炎、腎盂腎炎などでも沈殿物が混じることも。 |
4.量
量が減る |
大量に汗をかいたあとや下痢をしたあとでもない場合は、急性糸球体腎炎、慢性腎炎の疑いも。 |
量がとても増えた |
お茶やコーヒー、ビールなど利尿作用のある飲み物をとった・利尿剤を服用したとき。糖尿病や腎臓病の疑いも。 |
5.回数
1日10回を超える |
頻尿の疑い。慢性腎炎、糖尿病、過活動膀胱などの可能性が。 |
体内時計と毛細血管が腎臓を左右する
2016年11月アメリカ腎臓病学会総会がシカゴで開催され、根来ドクターの研究が発表されました。「遺伝子操作で作製した生体リズムを刻む時計タンパクがないマウスを使った実験で、時計遺伝子が働けなくなったマウスは、体内リズムがくずれ、毛細血管がしだいに劣化し、血管が詰まりやすくなり、腎機能不全などの障害が起こりやすくなった。
つまり、体内時計が腎臓に影響していることや、毛細血管の重要性が明らかになった。」