ダイエットに効果的なのはNEAT(ニート)しっかり食べて体脂肪を燃やす
先日、健康管理士のセミナーを受講してまいりました。よくあるダイエット系の講義かと思いきや…かなりファンキーな京大名誉教授「肥満研究の権威」の森谷敏夫先生直伝の「NEATのススメ」でした。 巷に氾濫しているダイエット理論も併せてまとめますので、ちょっと長めの知識編。
目次 |
1.肥満の原因
戦後、高度成長期から日本人がどんどん太ってきた理由は、脳に満腹感を与えるお米の消費が激減して、代わりに脂肪の多い食事をするようになったからです。つまり、米を主食にして魚や野菜を食べる「高糖質食(和食)」から、肉や油を多く摂る「高脂質食(洋食)」へと急速な勢いで変化してきたから、というのが第一の原因です。
よくいわれるところの、食事の欧米化です。でも、ここで一つ疑問がわきませんか?
今流行りのラ〇ザップなどのパーソナルトレーナーの減量指導として「炭水化物は控えてください」という「糖質カット」「糖質ゼロ」が主流ですが、昭和30年代の食生活では、国民一人当たり年間120kgのお米を食べていたのに、最近では当時の半分の60kgしか食べていません。
そもそも炭水化物であるお米を食べていないのに、メタボや糖尿病患者数(予備軍含)は40倍もの数になっています。炭水化物(糖質)の摂りすぎが、メタボや糖尿病の原因であるならば、それこそ昔の日本人はみんなおデブで糖尿病患者で溢れていたはずですが、現実は違います。
(因みに、糖尿病は遺伝であるという説がありますが、これは違います。人口が減少しているのに、糖尿病患者数が40倍に増加しているというのは数字不一致で証明できませんから。)
2.脳に栄養が届いていない!?現代人の誤解
「ごはん」は炭水化物で、食べると「ブドウ糖」を作ることはよく知られています。
しかし、私も含めてご存知ない方が多いのですが、「食べた炭水化物の7割は筋肉・3割は脳で消費」されています。
また、脳のエネルギー主源は「糖質(ブドウ糖)」です。他の臓器はほとんど糖質は使いません。 ちなみに、心臓が使うエネルギーの約70%は脂肪です。なぜなら、糖質は脳と筋肉のためにとっておくからです。
仮に1000kcalの糖質を摂取したとすると、筋肉で700kcal使いますから、脳には300kcalしか使えません。 人間の脳は1日400kcalぐらい使いますので、朝ごはんを食べないとか、朝からスムージーだけとかで、脳のエネルギー源である炭水化物をきっちりと食べないと、脳の栄養が不足してるので常に眠くなります。
朝から眠いのは…睡眠不足や季節だけのせいではないのです。 新しくエネルギーが入ってこないので、自己防衛反応として、できるだけ今あるエネルギーを使わないように、と脳が休んでいるのです。 携帯バッテリーでいうとわかりやすいのですが、「緊急省電力モード」に入っているということです。
3.ご飯を抜くとすぐに体重が落ちるのはなぜ?
ごはんを減らすと体重はすぐに減りますが、減ったのは脂肪ではなく、筋肉や肝臓に貯蔵されている糖質燃料のグリコーゲンとそれに結合している水です。
筋肉は、活動するために摂取した糖質の70%近くを必要とします。そのため、人間の体は、非常事態に備えて常に糖質を蓄えておこうとします。その保管庫ともいえるものがグリコーゲンで、特に肝臓のグリコーゲンは糖質がエネルギー源となっている脳の非常食保管庫でもあります。
そのため、ごはんを減らしたり、炭水化物抜きダイエットをすれば、脳や筋肉に糖質が不足するため、それを補うために蓄えられたグリコーゲンが消費されるのですが、その時にその3~4倍にあたる水分を同時に脱水するため、見かけの体重は4倍近くも減少します。
ただ、脂肪はほとんど減っていないということです。だから、食事をするとすぐに結合して体重がリバウンドしてしまうんですね。
4.脂肪代謝と自律神経の深ーい関係
正しくダイエットをするために、カラダ全体の脂肪代謝を系統的に説明していきましょう。
●白色脂肪細胞・ベージュ脂肪細胞・褐色脂肪細胞と自律神経のフロー
まず脂肪には現在3種類あると言われています。(1551年にスイスで褐色脂肪細胞が発見・2012年に米ハーバード大学医学部研究チームがベージュ脂肪細胞を発見)
- 白色脂肪細胞(WAT)
- 褐色脂肪細胞(BAT)
- ベージュ脂肪細胞(BRITE)
白色脂肪細胞(WAT)は、脂肪を蓄える貯蔵庫のような存在で、血中の脂質を合成しトリグリセリドという形で備蓄し肥大化していきます。
その際には必ずその作業結果(たくさん脂肪を蓄積しましたよ!)を脳に伝えるために、レプチンというホルモンを放出し、体脂肪に比例して情報を循環させ、自律機能の調節を行う間脳視床下部にある満腹中枢に情報が集約されます。
そして、神経細胞(ニューロン)膜に存在するレプチン受容体に作用し、交感神経を刺激することで、2系統に指令を出します。
指令系統①
指令系統②
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すなわち。エネルギーの取り込みを抑制すると同時に、エネルギーを消費しようという作用を指令します。レプチンの終結は体脂肪に比例しますので、現状の体脂肪や体重を維持しようとする調整作用を及ぼそうとしています。
レプチンというホルモンはよく、グレリンというホルモンとセットで紹介され、食欲を抑制する調節ホルモンといわれますが、「痩せろ!」という肥満解消の指令信号をするわけではなく、「現状を維持しろ!」という意味の方が近いかもしれません。
脂肪の過剰な蓄積をさせないような作用はしますが、そもそも脂肪は生きていくためのエネルギー源として人体には必要なものですから。
もしも。 徐々に太り続けている方がいらっしゃれば…
それはこのレプチン情報による自律神経系の応答感度が鈍っているか、その応答以上に摂食が過剰になっているか(つまり食べ過ぎ)だということです。
自律神経系の応答感度は、加齢とともに鈍ってきますし(やはり老化)、中性脂肪が溜まりすぎるとレプチンの分泌量が減少します。
…ここまでで 脂肪を燃焼させるためには、レプチンのはたらきをよくすることと、自律神経系統の感度をよくすることが重要、ということがおわかりいただけましたでしょうか?
●ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞について
まずは、よく見る間違ったダイエット情報を訂正させてください。
これが正解⇒「褐色脂肪細胞を刺激すれば簡単にやせるということはありません。そんなデータは存在しません。」
確かに、褐色脂肪細胞(BAT)は、肩甲骨周囲・首・脇の下・腎臓周囲・心臓内膜周辺に分布されています。ノルアドレナリンの刺激によって筋肉の何十倍もの熱を作るのは事実ですが、その数は加齢とともに減少していくので、成人になってダイエットで活躍できるような量まで残っていません。
褐色脂肪細胞(BAT)の機能としては、
①体温調節機能であるということ
②生命の危機を感じたときに体を守る脂肪細胞である
といわれています。
では、数年前に医学専門誌cellでも存在が発表されたベージュ脂肪細胞はどんな細胞なのでしょうか?
ベージュ脂肪細胞(BRITE)は、小さな豆などの大きさで白色脂肪細胞の中に散在しているとされています。(brown-in-white)
白色脂肪細胞は、皮下脂肪と内臓脂肪に大きく分けることができますが、ベージュ脂肪細胞は、内臓脂肪よりも皮下脂肪に多いといわれています。
そして、ここが大発見なのですが!
ベージュ脂肪細胞というのは、運動によって、白色脂肪細胞を変化させるということがわかりました。この変化を促すのが「アイリシン(イリシン)」という名前の新しいホルモンです。
この新ホルモンは、運動ホルモン・筋肉ホルモンとも呼ばれ、運動によって筋肉より分泌され、血中のアイリシン濃度の上昇によって、エネルギー消費が増加され(=総エネルギー代謝を増加させ)、皮下脂肪組織に大きな変化をもたらします。
つまり、白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変化させる因子の一つなのです。
脂肪を燃焼させる=痩せるために必要である脂肪細胞は、white(白色)でもなく brown(茶色)でもなく beige(ベージュ)だということがわかったのです。
5.痩せたいならニートしなさい!!
痩せる=脂肪を燃焼させるためには、運動が絶対必要であることは避けられない事実。運動せずに痩せることができるのは、不可能です.
森谷先生が提唱するニートとは…Non Exercise Activity Thermogenesis の略で、「非運動性熱産生」日常生活でエネルギーを消費する運動以外の身体運動のことをいいます。
ニート(Non Exercise Activity Thermogenesis) =非運動性熱産生 ↓ 日常生活でエネルギーを消費する運動以外の身体運動のこと |
実はNEATは、人間の1日のエネルギー消費量の約4割を占める、ポテンシャルエネルギー。
現代人はNEATが減少した結果、肥満が増えた、と森谷先生は指摘しています。
NEATを増やす3ヶ条 ①くつろぐ時は身体を起こす ②立ってできることは立ってやる ③常にカラダをごちゃごちゃ動かす |
エネルギー消費量は、座るよりも立つことの方が1.2倍。歩けば3倍になりますので、仕事でデスクワークの座位活動をなるべく減らして、立ったり歩行運動の時間を増やし、家事などの日常生活活動時間を増やすことで、脂肪が燃焼するということになるそうです。
実際にカナダで18~90歳 17,013名の座位時間と死亡率の関係を12年間調査した結果、死亡率に15%も違いがあったというデータも発表されており、スポーツジムに行ったり、長距離マラソンすることだけが運動ではなくて、日常生活の中で体を動かすことが立派なNEAT。
まさに、森谷教授のお言葉を借りれば…「座ってないで、立って動け!それだけで十分、運動や!」
6.もっと炭水化物を食べて、しっかり痩せる
いよいよまとめに入ります。
太る仕組みの研究者である森谷敏夫(京都大学名誉教授)は自身でその理論を実践され、67歳の現在でも40年間変わらない体重と体脂肪率9.8%をキープされていらっしゃいます。(実際にお会いしましたが、とてもスタイルよく、血色もよく溌剌とされてました。)
糖質ゼロ・低炭水化物ダイエットに警鐘をならし、太りにくい食べ方とNEATの実践で確実に痩せると断言されてます。 ちなみに、森谷教授は今でも毎日3000kcalの食事をするとおっしゃってました。
糖質を控えるダイエットをすると
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実際に、京都大学の女子学生103人を調べたところ、BMIは低いのに、体脂肪が高い、いわゆる「隠れ肥満」が約半数の51人だったそうです。
見た目の細さを気にして、炭水化物を食べないことで、太りやすい体をつくりあげ、内臓脂肪の多い隠れ肥満になっていることがわかりました。
これは、筋肉が省電力モードに入っていますので、低血圧や冷え性体質をも作り上げていることにもなります。
同時に、低炭水化物・高脂肪食を続けていると、抑鬱・落ち込み・敵意・情緒などの感情気分障害が悪化するデータも発表されていて、体にとっても精神にとっても糖質ゼロダイエットはいい効果にならないということになります。
ちなみに、このデータ結果は、腸内細菌理論からも説明ができます。 糖は腸内細菌にとってもエサになっているので、その糖の供給がなくなると、腸内細菌の数もさらに激減し、セロトニンやドーパミンなどの前駆体を作れなくなり、脳腸相関から鬱などの心の病気も増えることになります。
最後に、森谷教授ご推薦の太りにくい食べ方黄金比率をご紹介します。
太りにくい食べ方黄金比率
(この比率は糖尿病や高血糖の方には当てはまらないのでご注意ください) |
まとめ
- 食べた炭水化物の7割は筋肉・3割は脳で消費するので、脳のエネルギー源となる炭水化物をしっかり食べるべし。
- 脂肪を燃焼させるためには、レプチン(ホルモン)の働きをよくすることと、自律神経の感度をよくすることが重要。
- 腸内細菌のエサでもある炭水化物(糖)をしっかり食べて、NEATをすると痩せ体質になる。
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