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【大腸の病気】女性にも急増している大腸がんとの向き合い方をご紹介

2015年、日本人の死因1位の「肺がん」に続いて、年間の死者数が2番目に多いのが「大腸がん」。 60歳代に見つかることが多く、第二の人生のQOL(生活の質)を左右することもある一方、早期に見つかれば100%完治が可能ということで、森正樹氏(大阪大学病院消化器外科教授/日本癌学会副理事長)による「大腸がんとの向き合い方」をご紹介。



1.大腸がんとは


大腸とは、小腸と肛門をつなぐ長さ約2mの消化器官で、水分や栄養の吸収、排便などに関わっています。日本人の場合、がんができやすいのは肛門に近いS状結腸kら直腸にかけての範囲で、その割合は約7割にのぼります。


大腸の壁は、薄い5層構造になっていて、最初にがんができるのは一番内側の粘膜。その後、増殖して周りの組織をむしばみながら広がっていく「浸潤しんじゅん」が起こります。がんの広がりが内側から2番目の「粘膜下層」までのものを早期がん、それ以上のものを進行がんと呼びます。


粘膜下層には、血管やリンパ管がたくさん通っており、その中にがん細胞が入ると他の臓器にがん細胞が侵入し、増殖する「転移」が起こります。つまり、早期がんでも転移の可能性があるということで注意が必要。 最も多いのはリンパ節への転移で、大腸を通った血液が流れる肝臓や肺への転移も増えます。


早期がんでは症状が出ないことが多いですが、進行がんになると便に血が混じる場合があり、さらに進行すると、下痢などの便通異常、腹痛、貧血などの症状が表れます。


今では、早期発見すれば大腸がんは100%治るようになりました。 ただ、5年生存率は男性が72.2%、女性が69.6%にとどまります。 この理由としては、進行した後にがんが見つかり、治療が遅れる場合があるためです。早期発見できるかどうかがとても重要です。


2.診断方法


簡単な診断法として「便潜血検査」があります。2日連続で便を採取し、便の中に血液が含まれていないかを調べます。健康診断でも広く行われている方法です。


この検査では、進行がんの90%、早期がんの50%が「陽性」と判断されます。ただ痔の潜血と間違わないよう注意が必要です。 陽性となった場合には、より精度の高い「大腸内視鏡検査」を行います。


大腸内視鏡検査では、直径約1cmの管を肛門から挿入し、大腸の中をカメラで観察します。腸の隅々を見ることができるため、がんを見落とす可能性は減るものの、大腸の中を空っぽにして行う必要があり、前日から下剤を服用しなければなりません。


粘膜などに異変が見つかれば、管の先端に付いたはさみを使って組織を採取し、顕微鏡などで観察します。病巣の小さながんや、将来がんになりそうなポリープが見つかった場合は切除などの処置をします。


CTコロノグラフィーでは、通常のコンピューター断層撮影法(CT)のように内視鏡を挿入する必要がなく、下剤の量は内視鏡検査の半分以下、検査時間も約15分と短い一方、デメリットとしては、小さい病変を見つける精度は、内視鏡検査に劣ります。


内視鏡


内視鏡は、先端部分にカメラが付いた直径約1cmの柔らかい管で、これを肛門から挿入します。大腸がんの治療で、内視鏡が使えるのは、腫瘍の深さが浅く、肝臓や肺、リンパ節など他の臓器に転移がないケースです。 


また、現在では、大学病院などで試験的に導入されている段階ですが、内視鏡を使った「仮想病理検査」があり、内視鏡検査の画像を拡大して見ながら検査をするというもので、検査の日数と治療のスピード化につながると期待されています。


3.治療法


①「ポリープ切除術」

粘膜表面からぷっくり膨れたポリープと呼ばれる腫瘍を切る治療法です。内視鏡の先端から飛び出た投げ縄のような金属(スネヤー)をポリープに引っかけて、締めながら電気で焼き切ります。


②「内視鏡的粘膜切除術」

腫瘍が平らだったり、窪んでいる場合には、下に薬剤を注射して腫瘍を浮き上がらせ、スネヤーなどで切り取ります。


③「内視鏡的粘膜下層剥離術」

スネヤーを引っかけられないほど腫瘍が大きい場合は、薬剤を注射して切除範囲を浮き上がらせて、先端に取り付けたメスなどで切り取ります。この治療は、医師に高い技術が求められます。


④粒子線治療

身体的負担の大きい手術の代わりとなる治療として、「重粒子線」「陽子線」などの粒子線治療があります。ただ、まだ比較的新しい治療法のため、科学的知見が十分ではなく、医療機関も限られ、保険が利かないために約300万円の費用も必要になります。


4.結腸がん手術


肛門から離れた「結腸」の結腸がん手術では、がんから口側と肛門側にそれぞれ10cm離れた場所を、周囲のリンパ節とまとめて切除するのが基本です。 腹膜や子宮など周囲の臓器にしみ込むように広がっている時は、それらも一緒に切除します。


おなかの5ヶ所を1cm程度切り、そこから先端にカメラのついた腹腔鏡という器具を入れて、鉗子やメスで処置をする「腹腔鏡手術」をするのが一般的。 また、最近は、手術痕が目立たないように、へそに3cmほどの傷を1つだけ作り、そこから全ての器具を入れる腹腔鏡手術も増えています。


手術後は、翌日から水分の摂取、2~3日後から食事の再開が可能になり、1週間ほどで退院が可能。ただ、がんの切除後に縫合した場所が狭くなって消化物が通りにくくなったり、傷口からの細菌感染が起こったりする危険性もあり注意が必要です。


5.直腸がん手術


肛門に近い直腸にがんができた「直腸がん手術」の場合、開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット手術があります。


①「局所切除術」

がんの大きさが約2cm以内で、リンパ節への転移がないと見込まれる場合に行います。おなかを切らず、広げた肛門から器具を入れて処置をするもので、がんができた部位のみを取り去ります。 


②「前方切除術」

2cmを超えるほど大きいがんが、肛門から比較的離れた場所にある場合に行います。がんの部位と周囲の血管、リンパ節を一緒に切除し、「自動吻号器」と呼ばれる器具を肛門から入れて、切った腸管同士をつなぎ合わせます。


③「直腸切除術」

がんが肛門の近くにある場合、確実に取り除くために肛門ごと一緒に取り去ります。肛門がなくなるので、左下腹部から結腸の端を出す人工肛門をつくります。パウチという専用の袋を装着し、週2~3回の頻度で交換します。手術前と同じ日常生活を送れるし、においで周囲に迷惑をかけることもありません。

6.抗がん剤


再発した大腸がんでは、抗がん剤治療が一般的です。他の臓器や骨などにもがんが広がっている場合は、手術は不可だからです。ただし、抗がん剤治療の一番の目的は、進行を遅らせることです。 かつては、再発した患者さんの平均余命は半年といわれてましたが、現在の治療法では、3年ほどにまで延びました。 


抗がん剤がとてもよく効いた場合、手術を組み合わせることで治療できる場合もあり、これを「コンバージョン」と呼んでいます。コンバージョンを狙うには、強力な抗がん剤を使う必要がありますが、下痢、手足のしびれなどの副作用が出やすく、体力が十分にあり、大きな負担に耐えられそうな患者さんが対象になります。 抗がん剤の副作用に耐えられそうにない患者さんには、放射線治療で症状の緩和を狙うこともあります。


基本となる薬は、DNAの合成を妨げることでガン細胞の分裂・増殖を阻害する「フルオロウラシル」です。これに、ガン細胞のDNAと強く結合する「オキサリプラチン」や、DNAを複製する酵素の働きを抑える「イリノテカン」など、異なるメカニズムの薬を組み合わせて使うのが一般的です。


最近は、がん細胞の表面にあるタンパク質などを目印に、がん細胞だけを狙い撃ちする「分子標的薬」が大きな効果を上げています。がん細胞が栄養を補給する血管ができないようにして兵糧攻めにする薬なども注目を集めています。


まとめ

  • 国立がん研究センターの2017年がん罹患数予測では、大腸がんの罹患数が男女合わせて1位 149,500人。(男性4位 85,500人・女性2位 64,000人) 
  • ただ、早期発見で完治できるので、自己診断や健康診断の検査結果を見て異常を案じたらすぐに病院へ。
  • 大腸がんの一番の原因としては、腸内細菌の減少による、腸内環境の悪化です。その環境に加えて、高脂・高糖の食事とウォシュレットの使用で、さらに腸内細菌が激減しています!!





田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

美腸カウンセラー®/美腸をつくるたった2つの習慣で、免疫力up・美肌get・ヤセ菌増やして痩せやすい体を手に入れるoriginal『美腸Methods®』を全国に展開。 【藤田絋一郎先生(東京医科歯科大学名誉教授)監修】
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