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東洋医学のとても重要な基本知識【気・血・水・精について②】精の秘訣

 「病は気から」といわれるように、「気」のバランスが崩れるところから、体調不良や病気は始まります。「気」の陽の部分に関しては前回(東洋医学のとても重要な基本知識【気・血・水(津液)について①】で解説いたしましたので、今回は陰の部分である「精」に関して解説します。




1.『 精 』の概念


『 精 』 とはナニ?


陰の部分というとネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、全くそんなことはなく、普段は表に出ないだけでむしろ陽の部分よりも重要ともいえます。


「精が出る」「精根尽き果てる」などという言葉が表すように、「精」とは人体におけるエネルギーの根源です。「気」を生み育む大元ともいえるでしょう。


性質的な面では「活動的、発散」「保持、引き締め」という特徴があります。直接的に人体の動力となるのは「気」ですが、それをコントロールしているのが「精」になります。


そのパワーバランスは地球の公転運動と似ています。 遠心力の力で太陽から離れようとする力(陽)と、太陽の重力により引っ張られる力(陰)が拮抗していることで公転が維持され、秩序が保たれています。「気」と「精」も同じようにバランスを取ることで、生命の秩序を保とうとしています。


『 精 』の種類


「精」は「先天の精」と「後天の精」の二つに分けられます。


「先天の精」は、親から子へ受け継がれる生命力の源で、腎に貯蔵され各臓に配分されます。これが弱い子は発育が遅く、食欲も少なく、虚弱な身体をしています。しかし「後天の精」の補充が充分にあると、症状は改善していきます。


「後天の精」は脾・胃の働きにより、飲食物を消化吸収することで生み出され、腎に送られ貯蔵されます。貯蔵された「精」は、また腎から各臓に配分されます。



2. 『 腎精 』について


『先天の精』+『後天の精』=『 腎精 』


上図にもありますように、「先天の精」と「後天の精」が合わさったものを「腎精」といいます。


「腎精」は、骨や歯の発育、髄の生成、脊髄や神経、大脳機能を健全に保つなど、成長に関わる働きをになっている物質なので、飲食物が不足したり、脾胃の不調によって、後天の精が生成できないと腎精が減少します。結果的に、幼少時ならば発育や二次成長の遅れ、小児喘息などの症状が生じ、高齢の場合は、腎の機能低下、生殖機能の低下、骨粗鬆症、物忘れや頻尿といった老化現象などが生じます。


成長・生殖・老化に関わるのが『 腎精 』



東洋医学では、女性は7年周期で、男性は8年周期で身体が変化するといわれ、女性は7×4=28歳、男性は8×4=32歳が身体的な最盛期といわれています。


これは「精」が成長・老化に伴い充実し衰退していくことによる変化です。出来るだけ「精」を消耗させないように年を重ねて行くことで、若さと健康が保たれます。逆に「精」が消耗すればするほど、病気にもなりやすく老化も早まります。




精の不足が原因…『 陰虚証 』



「気」と比べて相対的に「精」が消耗している病的状態を「陰虚証」といいます。ある程度健康な方や、元気な子供さんでもこの相対的な「精」の消耗というのは少なからずあります。


この陰虚証は「陰虚内熱証」ともいい、「精=陰気」の引き締める力が弱まることにより、「気=陽気」の力が過剰になり熱が停滞している状態です。 この停滞した熱が、筋肉のコリをはじめ様々な体調不良の直接的な原因にもなりますし、この状態が慢性的に続くと「血」や「水」も停滞し、より重篤な症状に繋がっていきます。


陰虚証の中でも、腎の精の衰えがメインになっている状態を「腎虚証」・脾の精の衰えがメインなら「脾虚証」・肝の精の衰えがメインなら「肝虚証」という診断になるわけです。


五臓の中でも 腎・脾・肝が「陰臓」といわれ生命活動のベースになっているため、この三臓の精の衰えに着目して診断を立てることで、全身状態の改善を図ることが出来ます(プラス肺の精の衰えをメインにおいた「肺虚証」という診断を立てる考え方もあります)。


よく年齢を重ねると腎の「精」が衰えるため腎虚証になるといわれますが、決してそうではなく、年配の方でも腎精より他臓の精の弱りを整えることで、結果的に腎精が補われ強化されるケースは少なくありません。


この陰虚証の状態から、何らかの原因で「気」まで消耗してくると、「陽虚証」といわれる状態になります。「気=陽気=活動エネルギー」ですから、陽虚証になると身体が冷え、食欲も無くなり、気力・体力も落ちてきます。またそこまで行く手前の、陰虚証から陽虚証への移行型(陽虚傾向)の方もたくさんおられます。


3. 長生きの秘訣…「気」と「精」のバランス


「気」と「精」のバランスを上手く整えながら生活し年を重ねていくことが、健康で長生きの秘訣といえます。

中でも「精」をいかに充実させていくかが重要になってくるのですが、「精」の消耗を極力抑えながら新たな「精」を補充していくことが大切です。そうすることが、本当の意味でのアンチエイジングともいえるでしょう。


そのためには何が必要かというと、やはり「食事・運動・睡眠・精神」のバランスを整えるという一言に尽きるのではないでしょうか? 世の中に健康法は数多くありますが、まずは毎日の自身の生活を見直してこの四つのバランスが整っているかをチェックすることから始めることが、何よりも大切かと思います。




我孫子 大輔(漢方脉診流あびこ鍼灸院長)

我孫子 大輔(漢方脉診流あびこ鍼灸院長)

臨床に携わって20年。開院後も日々『東洋医学』『脈診』『鍼』の理論と技術を探求。KACS(漢方鍼灸臨床研究会)副会長を務め、後進育成の研修講師も兼務。担当講義にシリーズ『漢方病理学講座』『病態パターンと各証の病理学』『実地臨床における脉状考察』等。

漢方脉診流鍼灸

あびこ鍼灸院

脈診』というのは、一般的な鍼治療ではなく、手首の脈を診る東洋医学独自の技術です。手足のツボを使って、身体内部からカラダ全体の氣・血・津液バランスを改善していきます。 詳しくはパンフレットをご覧ください。
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