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“うつ”に関する10の誤解☆薬だけに頼らない治療【認知行動療法】その①

私はうつではありませんが、うつで苦しまれている方は増えています。2014年度厚労省発表によると、医療機関を受療したうつ病・躁うつ病の総患者数は112万人。もう、ご本人だけが知るべき情報だけではなく、社会で生きるみんなが共有する知識ではないでしょうか? うつ病になられたご本人(與那覇潤さん)のお言葉を借りて、シェアさせていただきたいと思います。



目次 うつは「意欲が下がる病気」ではない:うつに関する10の誤解
  1. 誤解1:うつは『こころの風邪』である
  2. 誤解2:うつ病は『意欲がなくなる病気』である
  3. 誤解3:『うつ状態』は軽いうつ病である
  4. 誤解4:うつの人には『リラックス』をすすめる
  5. 誤解5:うつ病は『過労やストレス』が原因である
  6. 誤解6:うつ病には『なりやすい性格』がある

うつは「意欲が下がる病気」ではない:うつに関する10の誤解


うつ病の要因は個人によって様々ですが、健康問題、家族問題、経済生活問題、雇用・労働問題などの問題が背景にあるといわれています。そもそも、自分が「将来うつ病になるかもしれない」と予測して生きている人はいないと思います。労働環境の激変などで、心理的に追い込まれた状態からうつになり、症状が重篤になってから、インターネットなどで病気について検索することになる人がほとんどです。その中には、間違った知識や、偏見や差別などにつながるものもあるので、治療方針がミスリードされたり、人格の否定や攻撃されたりすることもあります。


多くの人が陥りがちがと思われる10種類の「うつに関して広く流布しているが、正しくない理解」を「うつに関する10の誤解」としてピックアップしていきます。


1.誤解1:うつは『こころの風邪』である


うつに関してよく聞くフレーズがこれ。「うつはこころの風邪だから。誰にでもあることだから。」言う側は、善意でかける言葉であり、当事者としては、その温かさに感謝する気持ちと、「実際はそうじゃないんだ!」という実感が混ざり合って、泣き崩れそうな心境になるそうです。


この表現は、世界共通のものではなく、日本独特のキャッチフレーズで、1990年代に認可されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という副作用が少なく、飲み過ぎても危険性が低いため投与しやすい薬を普及させたい製薬会社と医学界の意向がはたらいたためといわれています。


ただ、このキャッチコピーがもたらしたメリットとしては、「うつ病のカジュアル化」。


それまでは、うつ病は、性格の問題とか、不治の病の精神病(精神病といえば隔離病棟での入院)という目でみられがちだったのが、一人で悩まずに気軽に相談していい病気という認識になりました。ただ、その反面、うつ病のカジュアル化は、こころの風邪だから、医者に行って薬をもらえばすぐに治るという、もう一つの偏見を生み出したデメリットでもあったのです。


では、抗うつ薬でうつは治るのでしょうか?


実は、難治性(治療抵抗性)のうつ病といって、相当数の患者には薬物療法の成果がみられないとされてきました。実際の臨床試験によれば、最初に投与された薬で症状が消えた人は、1/5 ~1/3のみ。薬を3ヶ月ごとに新しいものに切り替えて1年後に回復した人が、ようやく2/3ぐらいです。

つまり、3~5人に1人しか薬が即効性をもたない病気を「風邪」と形容するのが不適切です。



2.誤解2:うつ病は『意欲がなくなる』病気である


うつ病はこころの風邪というPRとともに定着した認識が、この「うつ病は意欲がなくなる病気」という理解。「やる気が出ない…それってうつ病かも?」といった広告を見たことがあるかもしれません。


実際にうつ病を体験した人には、この「意欲や気持ちの問題に特化したうつ病の語られかたには、非常に大きな副作用がある」と感じられてます。


病気の内実を、気持ちの問題に還元することは、「結局、気持ちのもちようじゃないか。誰だって満員電車に揺られて会社に行きたくなんかないけど、それでも頑張っているじゃないか。」という、病者に対する周囲のネガティブな感情を、逆にあおる結果になるからです。




うつ病発症の経緯として多いのは、

  1. 精神的に追い詰められる
  2. 徐々に能力の低下が起こる
  3. それでもどうにか仕事を続けようともがくうちに文章の読み書きができなくなるまで症状が進む
  4. こんな自分では仕事が回らない、と生きる意欲が消滅する


つまり、意欲の低下は病気の主症状というよりは、その結果だということです。



うつ病に伴って発生する能力低下のことを「精神運動障害(PMD)」と呼びますが、他人と会話している際に反応するスピードが落ちたり(運動慢化)、じっと座っていられずそわそわしておなじ話を繰り返したり(集中力の喪失)、言葉が出ない/言葉が頭に浮かばない(思考の鈍化)などがあり、病気を回復した後ですら、大事な記憶に欠落が生じ、悲しみに打ちひしがれることもあるそうです。


この精神運動障害を表現するのに最も適切な言葉が…脳にサランラップをかけられたよう


うつ病ではない私でも、風邪で発熱したときや、休めず心身ともにかなり疲労している時などは、脳みそがぼーっとした感じがありますので、その状態が、恒常的に続いているのが、うつ状態だというと想像しやすいのかもしれません。


脳力が低下すれば、当然仕事のパフォーマンスは落ちます。

鉛様(えんよう)の麻痺」と形容されるように、自分の体が鉛のように重くなり、自分の意思ではどうしても動かせない、動かないから仕事はおろか、食事や洗顔、入浴すらも行けない、という状態がうつ病における「カラダの重さ」になります。



3.誤解3:『うつ状態』は軽いうつ病である


医師までもが「あなたはうつ病まではいっていませんが、うつ状態です。」といい、なんだか症状が軽いイメージがありますが、これは間違いです。


精神医学の用語で、能力や身体の面でも不調が生じていることを「抑うつ症状」といい、総称として「うつ状態」という用語を使うためややこしいのですが、これは、うつ病の程度が軽いといういとではなく、どの病気に起因するものかまだ特定できてない、という意味です。

うつ病ではなく、躁うつ病(双極性障害)なのか、統合失調症なのか、または他の病気なのか…



4.誤解4:うつの人には『リラックス』をすすめる


うつ病の特質のひとつは、「反応性の欠如」といって、今までなら自分にとって楽しいはずのこと(ex音楽を聴く)でも楽しく感じられなくなることがあり、これが進行すると無快感症(アンへドニア)という状態になります。文字通り、一切の喜びも感じないし、美味しい食事を口の中にいれても味がしない、など。


うつで休んでいる人に、旅行やマッサージ、TVのお笑い番組やコンサートなどをすすめると、病者はその対応に困るそうです。



5.誤解5:うつ病は『過労やストレス』が原因である


「うつになった人は、過酷な労働環境の犠牲者だ。」という社会の認識について、病者の権利を守るという意味では、この言い方をむげに否定すべきではないと思っていますが、これは医学的に間違っています。


うつ病には、「内因性」と「心因性」の2種類があります。


内因性とは、まだ解明されていないのですが、ストレスや悩みがない状態でも、脳内にあるなんらかの要因によって脳の機能障害として発生してしまううつ病のこと。


心因性とは、過労やストレスといった心要因への反応として発生するうつ病のことなので、過労やストレスが原因というのは、実はこの心因性だけにしか該当しません。


また、「うつ病は過労やストレスが原因だ」という認識がもたらす、もう一つの誤解に「だから、そのストレスの原因を取り除けばすぐに回復する」というものがありますが、これも間違いです。


逆に、そのストレス源と引き離すことで症状が軽減する場合は、うつ病ではなく適応障害と判断されます。つまり、心因性のうつ病以上に、原因となったストレス因子(exパワハラ上司)を明確に特定できるもの、という意味です。 ただ、当初は適応障害だとされても、実は、うつ病の初期症状だった、とあとでわかるケースもあります。



6.誤解6:うつ病に『なりやすい性格』がある


よく言われるところの、なりやすいとされる性格の1位は「メンタルが弱くてすぐ投げ出す人」・2位は「いつも暗くて引きこもりがちな人」。しかしながら、これも間違いです。


この俗説が定着した理由には、時代背景が影響しています。


戦時中のドイツでは、うつ病含めた精神病患者を、遺伝的に脳に欠陥がある劣悪な人間ととらえ人権はく奪の蛮行がありましたが、戦後ドイツの精神科医による、脳や遺伝子のような生物学的要因に病気の原因を求める風潮をおさえて、「もっと個人の性格や生き方に注目して病気をとらえなおそう(病前性格論)」という動きが起きました。


専門用語で、メランコリー親和型と呼ばれる性格の特徴は、責任感が強く、社会の秩序を重んじ、その担い手に献身的に尽くすことに自分の生きがいを見出すタイプ、というのがあります。


1950年代に、最初の抗うつ薬(さんかん系抗うつ薬)が発見されたことで、「うつ病は脳内の化学物質の異常だから薬を飲めばいい」という生物学的療法が主流となりましたが、それ以前に流行った病前性格論が、1960年代からはじまった日本の高度成長期に、ドイツの学説の輸入が進んだ時期と重なり、なぜか日本にだけ、メランコリー親和型の病前性格論が世界的にも稀な定着を見せたのです。


高度成長期の日本といえば、定年まで会社に勤め、途中で結婚して家族を養い、自分自身の意見は引っ込めてでもその場で当たれらえた任務を忠実に遂行することをよしとする生き方が国民の全体を覆った時期でした。メランコリー親和型と関連させて、うつ病になりやすい性格とし、「病気になったのもがんばりすぎる性格ゆえだから、あなたは悪くないよ。」と患者の心を支えるために語り継がれた日本独自の解釈にすぎないのです。


【誤解7:若い人に「新型うつ病」が増えている】からは次号へ





田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

田和璃佳<日本美腸メソッズ協会代表>

美腸カウンセラー®/美腸をつくるたった2つの習慣で、免疫力up・美肌get・ヤセ菌増やして痩せやすい体を手に入れるoriginal『美腸Methods®』を全国に展開。 【藤田絋一郎先生(東京医科歯科大学名誉教授)監修】
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